観音様と孤娘柿   


昔々、宇治田原の里もお米や作物があまりできない年がありました。そんな秋のある日、どこからか一人の娘がやって来ました。しばらく村において欲しいと云うので、村人達はやさしく迎え入れました。
娘は、ある日、村に沢山ある「つるの子」という渋柿をとって、きれいに皮をむいて、藁をひいた上にやさしく置いて冷たい風にあてていました。しばらくすると、その柿に白い粉がふいて、今まで渋くて食べられなかった柿が、甘くて美味しいお菓子のようになっていました。
娘は、この柿の作り方を村人に教えると、村人達の暖かな心に感謝して村を去って行きました。村人達は、不思議に思って後を追いました。すると、禅定寺の丑寅、お寺の山の中にある大きな岩(美女石)の辺りで姿を消してしまいました。村人達は、はたと、あの娘は、禅定寺の観音様の化身だと分かったのです。それから、この柿を「孤娘柿」と名付けて、宇治田原の名産となったのです。禅定寺では、毎年十二月十八日(納め観音)に観音様に、「ころ柿」をお供えして一年の感謝法恩を祈祷して新しい年を迎えるのです。
「この柿を口にすると、諸々の病、怨、悉く退散し、福寿円満安楽の因がかき込むのです」
(観音利生記より)

  

おとめ観音


平成三年十一月、京都府歴史的自然環境保全地域に指定されている禅定寺の裏山に、「孤娘柿」伝説を顕彰して「おとめ観音」を建立。